借地権を返してほしいと言われたらどうするか


空き家の土地が借地の場合があります。
空き家が朽ち果てていきますと、地主から借地権を返してほしいと言われることがあります。
朽ち果ててしまったので、借地権は消滅しているから、建物を取り壊して土地を返してほしい、というわけです。
こういう場合、どうしたらよいでしょうか?

借地権とは

借地権とは、建物の所有を目的とする、土地の賃借権です。
借地権にも、借地借家法が施行された平成4年8月1日より前の旧借地法に基づく借地権、借地借家法に基づく契約更新のある普通借地権、契約期間到来時に消滅する定期借地権といった種類があり、その内容が異なります。
また借地権の価格算定方法ですが、目安として、借地を更地とした場合の評価額に借地権割合を乗じて算出するやり方がよく用いられています。
借地権割合は、国税庁が毎年発表する路線価図で確認することができます。
借地権割合は、路線価図で30%から90%まで、10%刻みで示されています。
このように、借地権には大きな財産的な価値があると言えます。
例えば、1000万円の土地の借地権割合が60%であるとしたら、借地権価格は600万円ということになります。

地主に借地権を買い取ってもらうには

前項で見たように、借地権には大きな財産的な価値があります。
それで一般的に、無条件で借地権を地主に返すというのは、もったいないことと言えます。
もし、その借地権付き建物が空き家で持て余してるなど、借地の返還を検討してもよいという場合であれば、地主に借地権を買い取ってもらうよう交渉してみるのが良いと言えます。
法律上、地主に借地権を買い取るよう要求できる借地人の権利、などというものは認められていません。
しかし、地主は借地の返還を求めてきているのですから、地主側にはその土地を何らかの仕方で活用したいという意向はあるはずです。
それで、交渉の余地が十分にあると言えます。
また実際に、地主が借地人から借地権を買い取るという事例は多く見られます。

借地権を第三者に売るには

借地権を第三者に売ることも可能です。
もちろん、借地権を譲渡しようとする場合には地主の承諾を得る必要があります。
しかし、地主が借地の返還を求めてきている場合、上記の地主の承諾が得られない場合があります。
その場合借地人は、裁判所に借地非訟という手続を使って、地主の承諾に変わる許可の申立をすることができます。
裁判所は、借地人が申し立てた第三者(借地権の売却先)に譲渡しても地主に不利益が認められないと認められるときは、許可を出します。
この場合通常、地主に対して承諾料を支払うという条件が出ます。
この承諾料の価格は、借地権価格の10%前後とされます。
裁判所の許可が得られれば、借地人は予定どおり第三者に借地権を売却し、地主に承諾料を支払い、その残りの代金を受け取ることができます。
なお、この非訟手続において、地主に介入権が認められています。
地主が介入権を行使しますと、借地権の買取を希望する第三者に優先して、地主が、裁判所の定めた金額で、借地権を買い取ることができます。
ただ、この地主の介入権を行使した場合でも、借地人としては適当な価格で借地権を地主に買い取ってもらうことができますので、目的を達することになります。

借地権と土地の所有権の等価交換について

固定資産の交換の特例という制度があります。
これは税法上、固定資産である土地や建物を同じ種類の資産と交換したときは譲渡がなかったものとする、つまり課税対象とはしないとする特例です。
この特例を適用するためには、交換する資産は同じ種類の固定資産でなければなりません。
土地なら土地、建物なら建物と交換するのではければ、この特例は使えません。
ただし、借地権は土地と同じ種類に含まれるとされています。
そこで、地主が借地人の建物のの敷地として貸している土地(底地)の一部と、その借地人が有する借地権の一部を交換する場合にも、この特例を受けることができるというわけです。
例えば、借地権割合が60%の土地について、地主が借地人に底地60%を譲渡し、借地人が地主に借地権40%を譲渡して交換し、交換後お互いに更地を所有するという方法になります。
実際には、それなりに広い土地でなければ無理ですが、地主に借地の返還を求められた時、全部を返還するのではなく、借地の一部を返還する代わりに、残った土地の底地を譲り受ける、こういう交換で解決する交渉もできます。
この特例が使えたら、地主は一部の借地が戻ってきて、その部分は借地権負担のない完全な所有権となり、他の部分は借地人の完全な所有権となる、ということになります。
この取引は、課税対象とならないため、地主にも一定のメリットがあり、交渉に応じてくれるかもしれません。

借地の返還に応じないといけない場合について

法律上、借地の返還に応じないといけない場合もあります。
まず、借地契約が定期借地契約であって、その契約期間が到来する場合です。
この場合、地主との間で新たに借地契約を締結できなければ、借地を返還する必要があります。
次に、普通借地契約で、地主から契約期間満了に伴う契約の更新が拒絶され、その更新拒絶に、自己使用などの正当事由がある場合があります。
ただし、正当事由がなければ、地主が更新に異議を述べても借地契約は終了しないため、借地人は借地の返還の求めに応じる必要はありません。
また、借地人が地代を支払わないなどの契約不履行があり、地主がそれを理由に賃貸借契約を解除してしまった場合も、借地を返還しなければなりません。
ただし、借地契約の解除については、上記の契約違反行為が地主に対する背信的行為に該当しない時は、有効とはなりません。
それで、地主にとっての背信的行為でなければ、地主の返還の求めに応じる必要はありません。
いずれにせよ、借地の返還については、地主と交渉をしてみて、双方納得いく形で解決を図り、場合によっては借地非訟という裁判所の手続きの活用も必要になっていく、ということになるかと思います。

借地権の空き家や土地をを地主に返さないといけないのかどうか、どうしたらよいのかわからない場合は、弊社または当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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