所有者全員の合意で空き家を売却する方法について

空き家の名義が共有で、それぞれに持分がある場合は、売却処分が大変になります。
前回見た通り、空き家の名義が複数人にわたる場合、全員の同意がないと売却処分できないからです。
しかし、簡単に所有者全員が合意できるわけではありません。
また、合意による売却にも、その方法があります。
それで今回は、所有者全員の合意で空き家を売却する方法について説明したいと思います。

共有名義の空き家の売却の方法

共有名義の土地を売るには、全員が売主になり、合同で売るという手順になります。
その手続として、共有者全員が立ち会って、売買契約書に署名と実印での押印をする、ということになります。
その際に、印鑑証明、住民票、本人確認書類などが必要になります。
全員が1箇所に集まって、契約や決済の手続きを行うのが原則です。
しかし、日程調整が難しく、全員が集まるのが困難な場合があります
その場合は、誰かが代表して売買するために、他の人からの委任状を用意します。
代表する人を除く共有人全員が、1人に全権委任する委任状を作成すれば、1人でも売却手続きできます。
ただし、上記の登記申請の受任を受けた司法書士は、委任状に不正があると勝手に売却できてしまうので、通常、委任した本人の売却意思を確認します。

売却の委任状について

委任状とは、委任者から受任者に対して、代理権を授与するための書面になります。
本件の場合は、各共有者が、手続を代理して土地を売る人に、代理権を授与することになります。
委任は口約束でも有効ですが、書面に残さないとトラブルになることや、買主にとっては口約束の委任など信用できないということがあり、必ず委任状を作成します。
委任状の書式として、含める内容は下記の通りです。
1.委任者の住所氏名と受任者の住所氏名押印
2.委任者が受任者に委任する旨
3.受任者に委任する権限
4.土地家屋の表示
うち、2.の委任者が受任者に委任する旨とは、委任の事実が分かる内容であり、「○○は××に下記土地の売却を委任する」などという文言です。
また、3.の受任者に委任する権限については、家族間ですべてを任せるなら「一切の権限を委任する」という記載となりますし、特定の権限を委任するなら、その権限を列挙して個別に記載するということになります。
特定の権限とは、例えば、売却価格の決定、売買契約の締結、手付金・違約金の額、手付金・売却代金の受領、決済日や引き渡し日の決定、登記手続きに関する権限などとなります。
また、委任状に添付する書類ですが、押印には実印を使うのが通例ですから、印鑑証明書も添付します。
その他に、本人確認書類として、住民票の写しと、運転免許証などのコピーも必要です。
また、登記簿上の住所と住民票の住所が異なる場合、住所変更登記についても委任状で委任する必要があります。
この住所についても、登記事項証明書の住所から、住民票の現住所への移転が証明される住民票等が必要になります。

売却時の利益や費用について

売却が共有者の合同でされるので、共有名義の土地家屋を売却して得た代金や経費は、すべて持分に応じて全員に分割されます。
それで、利益が出たときに課税される譲渡所得税も、共有者全員がそれぞれ確定申告して納税することになります。
名目上代表者1名の名義などとして売却されるとしても、実質的には共同売却しているので、代表者だけが譲渡所得税を負担するわけではありません。

売却時の窓口について

窓口は1人に絞ったほうが良いです。
これは、委任状を持って1人が売却する場合でも、また全員で売却する場合でも、そうなります。
不動産会社対応、銀行対応等、様々で手分けしたくなるとしても、それで分けてしまうと、契約書に漏れがあるなどの場合大変になります。
なお、窓口は持分が最も大きい人がなるのが通例ですが、これも共有者同士でよく話し合うことが必要です。

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売却額を決める

売却額は、もめる事項の1つです。
それで、販売を開始する前に共有者と話し合い、売却希望額と、もし価格を下げるならいくらまで大丈夫かを、決めておくことができます。
共有者が多いほど、意思決定に時間がかかりますが、意思決定している間に、買主が別の不動産に決めてしまったということなどが生じ得る可能性もあります。
それで、販売を始める前に、方針やお金が関わる判断は共有者同士で決めておいて、意思を統一することができます。
また、空き家を中古住宅として販売するのか、それとも解体して更地にして売るのかも決めておくことができます。

共有の空き家の売却ををどうしたらよいのか、わからない場合は、弊社または当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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