共有名義の空き家を売る場合

空き家が共有名義になっている場合があります。
空き家の所有者が亡くなって複数人が相続した場合、夫婦でマイホーム用の土地を購入するときに資金を出し合った、といったようなケースが考えられます。
また、親子が二世帯用住宅の土地を購入するときに資金を出し合ったような場合もあります。
こういった空き家を処分するには、どうしたらよいのでしょうか?

 

共有者全員の同意が必要である理由

空き家の名義が複数人にわたる場合、売却をするには全員の同意が必要になります。
その理由として、民法第251条では「他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」という規定があります。空き家の売却やリノベーションなどは共有物の変更にあたります。

しかし、共有者の所在や連絡先がわからず同意を得られないために、相続後の管理が不十分になる不動産が多く見られたため、2023年4月に民法の改正が行われました。これにより外壁や屋根の修繕・砂利道のアスファルトの舗装など軽微な変更行為については、持分価格の過半数で決定できるようになりました。

また民法第252条では「共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に伴い、その過半数で決する。ただし保存行為は、各共有者がすることができる。」という規定があります。
つまり管理と保存行為は全員の同意がなくてもできるということです。
例えば、空き家を賃貸する場合(管理)は持分価格の過半数の同意があれば可能になります。
また第252条で保存行為は単独で行うことが可能とされています。
ここで言う保存とは、庭木選定や建物の外壁工事などの修繕などのことです。
そういった修繕は共有者単独で行うことができます。

共有の空き家を売却する方法

共有の空き家を売るには次のような方法を取ります。

1.所有者全員の合意で通常売却
これは所有者全員の合意で通常の売却をするパターンです。
空き家の所有者の全員が売却に合意すれば、通常の空き家の売却と変わることなく売却することが出来ます。
これが最も高く売れる可能性が高い方法です。
所有者全員の目的が揃っている、所有者全員の関係性が良好など、合意の元に売却ができる場合はこの方法が良いと言えます。
そしてこの場合、共有者全員が一度に集まらなくても、委任状の作成によって1人でも売却することができます。

2.共有持分の売買
所有者全員の合意は得られないが、どうしても売却をしたいという場合、自分の持分だけを売却するという方法のことです。これは個人の意思決定だけで持ち分を自由に売却することができます。
ただし通常の土地建物のような融通が利かないため、売却価格は低くなります。

共有者や第三者に買い取ってもらう方法の他、あまり知られていませんが持分だけを購入してくれる買取専門業者もあります。

3.土地の場合、分筆して売却する
分筆とは土地を細かく区切り直して登記し直すことで、1つの土地を複数の土地に分ける方法をいいます。
分筆を行えば、面積や境界線がはっきりするので権利関係が分かりやすくなり、それぞれの所有者の判断で売却することができます。空き家の建物の場合でも、複数部分に分けられるのであれば、区分建物にするなどして分筆の方法を応用することもできます。

 

共有持分の放棄はできるか

土地の保有はしたくないが売却が困難であるなどの事情がある場合、共有持分を放棄することも可能です。
民法第255条によると「共有者の一人がその持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属する。」とあります。

放棄という法律行為は単独行為になりますので、所有者が放棄すると意思表示したら放棄できます。そしてその場合、放棄された所有権は他の共有者に移転し、その旨の持分放棄の登記が必要になります。
ただ、注意すべき点として、この放棄は権利の譲渡と同じですので、贈与税がかかる場合があります。
共有持分の放棄が贈与とみなされ、共有持分を新たに所有した人は、贈与税を支払う必要が出てくる場合がありますので注意が必要です。

共有の空き家の売却をどうしたらよいのかなど、弊社においても相談を受け付けております。
お気軽にお問い合わせください。

 

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