相続した空き家に住宅ローン残債があった場合

相続とは、被相続人(故人)に属する権利・義務を受け継ぐことです。
この権利・義務には、資産もあれば、負債もあります。
それで、空き家と言う資産を相続したと思ったら、その空き家には住宅ローン残債が残っている、と言う場合があります。
こういう場合、どうしたらよいのでしょうか?

単純承認、限定承認、相続放棄について

まず、普通に故人の資産も負債も受け継ぐ場合のことを、単純承認と言います。
つまり、空き家などの資産と共に、住宅ローン残債も受け継ぐ、ということになります。
こういった単純承認にするか、または、後述する限定承認、相続放棄にするかは、相続の開始を知った時(被相続人の死亡を知った時)から、3ヶ月以内に決定することになります。
ただし、相続人の財産にすでに手を付けてしまった場合は単純承認したものとみなされます。
次に限定承認についてです。
これは、被相続人の財産(プラスの財産)で、負債を返済する相続の仕方です。
これは、財産より負債が多いと思われる場合に、選択する方法です。
この限定承認は、複数の相続人がいる場合は、全員で行わなければなりません。
その場合、被相続地の住所を管轄する家庭裁判所に、限定承認の申述が受理される必要があります。
また、相続放棄という方法ですが、これは、被相続人の権利・義務を全て引き継がないということです。
複数の相続人がいる場合に、特定の相続人に対して、被相続人のすべての権利・義務を引き継がせる場合や、また単純に被相続人の権利・義務を引き継がない場合に選択します。
この相続放棄は、個々に行うことができます。
これもまた、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に、相続放棄の申述を行い、受理される必要があります。

相続財産に住宅ローン残債がある場合に注意すること

マイホームを全額現金で取得するケースはあまりないと思われます。
つまり、何らかの形で20-35年の住宅ローンを組んでいる、ということです。
仮に40歳でマイホームを購入して、35年ローンを組んだとしたら、75歳までローン残債が残るため、ローンを残して亡くなってしまうことも十分考えられる、というわけです。
この場合に気を付けることですが、まず相続物件のローン残債を把握することです。
被相続人が亡くなってから、最初の1か月は、各種手続きだけでバタバタします。
それで、残り2か月で、被相続人の財産や負債を調べるということになります。
空き家が借家であれば、貸主に返せばいいだけなので、さほど問題になりません。
しかし、空き家が持ち家の場合、もし債務が残っていれば、住宅ローンが一番借入金額が大きくなる傾向にあります。
つまり、空き家に住宅ローン残債がある場合もありますので、残債額や返済期間を確認する必要があります。
次に、団体信用生命保険の加入の有無を確認する必要があります。
住宅金融支援機構(フラット35)のローンで、団体信用生命保険に加入していない場合がありますが、他の民間金融機関ですと、団体信用生命保険に加入しています。
それで、もし団体信用生命保険に加入していたなら、住宅ローンの残債は、団体信用生命保険の実行で、完済することになりますので、家族が家を手放すなどということはありません。
ただ、相続人が団体信用生命保険の加入に気が付かずに、月々の住宅ローンの残債の返済額をを弁済しているというケースもあります。
その場合でも、団体信用生命保険の加入に気が付いた場合は、すぐに金融機関に連絡をとる必要があります。
連絡を取りましたら、金融機関から団体信用生命保険の手続き書類が送られてきますので、死亡診断書などの必要書類を添付して、手続き書類記入後送付しますと、団体信用生命保険の実行により、住宅ローンの残債が完済となり、月々の支払はなくなります。
この申請は、3年以内にしないと、団体信用生命保険による返済ができなくなりますので、注意が必要です。
なお、相続人が被相続人の連帯保証人となっていた場合、例えばローンを組む人の配偶者が連帯保証人となっていた場合などは、連帯保証人として本来の役割を果たす地位にいることになるので、この場合は住宅ローンの残債返済の義務が残ることになります。

ローン残債が払えない場合はどうするか

残債が払えない場合、法律的には、相続放棄や任意売却という方法はありますが、その前に銀行に相談してみることができます。
銀行に相談する第1の理由は、金利の交渉です。
10年以上前に契約した住宅ローンであれば特に、金利が高くなっていることがあり、交渉ができるということです。
第2に、空き家の土地の価値が、値上がりしていることがあります。
第3に、相続放棄や任意売却にしますと、金融機関が競売等で売却してローン残債の改修を図るのですが、残債を100%回収できるわけではありません。
そのため、銀行に相談し、交渉してみることが必要となります。
そうやって、銀行の月々の支払額を抑えつつ、その空き家を貸して、その家賃をローン残債支払いに充てるということができます。
その空き家を実際に貸せるのかという価値を確認したい場合は、家賃保証を手掛けている管理会社に相談してみることができます。
また、住居用の賃貸だけでなく、事業用の賃貸とすることもできます。
さて、実際にローン残債が払えそうにない場合ですが、相続放棄または任意売却ということになります。
相続放棄は、相続発生時または知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要がありますが、これは家庭裁判所に申し立てることにより、期間延長を行うことができます。
また、任意売却ですが、債権者(ローンを提供した金融機関)と債務者(ローンを借りている人)との間で条件を決めることができますし、一般に競売より任意売却の方が高値での売却ができます。
その売却価格から、ローン残債の弁済を行う、ということです。
なお、任意売却を行うときは、任意売却専門の不動産業者が仲介をする方法が一般的です。

空き家にもし住宅ローン残債があった場合にどうするか、また空き家を売却するのか、それとも貸してローンを返していくのか、どうしたらよいのかと悩む問題になりえることがあります。
そういった問題についてもお困りの場合は、弊社または当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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