2022年生産緑地問題と空き家について

現在でも、地方や都市部において、空き家が増大しています。
2017年時点においても、すでに1000万戸を突破しているものと思われます。
そして、今後も人口減少、世帯減少のために、空き家がさらに増大すると見込まれています。
それだけでなくさらに、下記の生産緑地の問題によって、空き家が増大するという事情が発生します。
それが、2022年の生産緑地問題です。

生産緑地のなりたち

1974年に生産緑地法が公布されました。
これは、市街化区域内の農地の宅地化を促す目的で、一部自治体において、農地の宅地並み課税が行われたというものです。
当時は深刻な住宅不足が問題となっており、その解消のためにこういう処置を取っています。
その後、1992年の法改正により、市街化区域内の農地は、農地として保全する「」と、宅地などに転用される農地に分けられました。
生産緑地に指定されると、固定資産税は農地並みに軽減され、相続税の納税猶予を受けることも可能になります。
その代わり、建築物を建てるなどの行為が制限され、農地としての管理をしないといけない、というわけです。
同法の適用が1992年からであり、その期限が30年後、つまり2022年となります。
この期限を迎える2022年に、所有者が病気などで農業に従事できなくなったり死亡した場合に、所有者は市区町村の農業委員会に土地の買い取り申し出を行える、ということになります。

生産緑地はどれだけあるか

この生産緑地ですが、放出可能性のある地域は東京23区、首都圏・近畿圏・中部圏内の政令指定都市、その他整備法に規定する一部地域となっています。
そして、2013年3月時点の生産緑地は全国で1万3442ヘクタール(約4066万坪)あるとされています。
一戸建て住宅1軒建てるのに35坪必要としますと、およそ116万戸の一戸建て住宅の建設が可能、ということになります。
そして、その土地がマンションやアパート用地に変貌した場合には、その戸数は飛躍的に増大することになります。

生産緑地が解除されたらどうなるか

さて、2022年となって、所有者が農業委員会に土地の買取請求をするとしても、まず市区町村は予算不足等の原因で買取ができないと見込まれます。
それで、生産緑地として他に買う者がいない場合には、この生産緑地指定が解除されます。
そうなると、従前は固定資産税が優遇されて低かったのが、数百倍にハネ上がってしまいます。
それで所有者は土地を持ち続けられず、売却するしかなくなる、ということです。
こういったまとまった土地を仕入れることができるのは、一般の人ではなくて、一戸建てを建設する大手ハウスメーカーやマンションディベロッパーという業者になります。
まさに業者は、その2022年に向けて、虎視眈々と狙っている、ということです。
また、立地に難がある土地では、アパート建設が進む可能性が高いです。
土地の上に土地の上にアパートなどの住宅を建てれば固定資産税や相続税評価額が下がります。
賃貸住宅を建てれば、土地の固定資産税は6分の1になり、相続税の対策にもなります。
それで、現在でもレオパレスなどのアパートが大量に建てられ、空室率が高まっています。
そんな空室がさらに増大して、さらにアパートが元農地にたくさん建てられ、人口も減っているので入居も進まず、結果として空き部屋だらけのアパートが増加する、ということになりかねません。
そうなると、現在空き家になっている古家にしても、いざ2022年以降に貸そうとしても、入居者を見つけるのがさらに難しいということになってしまいます。

国はどういう対策を取っているのか

国もそういう事態になることは十分に予測しています。
それで、生産緑地の指定期限が切れた30年後も、10年毎の延長を可能とする「改正都市緑地法」の施行を6月に行っています。
しかし、その時にはすでに30年が経過していますので、土地所有者の高齢化が進んでいます。
それで、実際に延長ができるのは、所有者が農地を維持できる体力があるか、後継者がいる場合に限られます。
また、単に農地として維持するのではなく、農産物の直売所や農家レストラン等の設置も可能となっていますが、これも事業意欲のある後継者がいるなどの場合に限られると思われます。

生産緑地の土地をどうしたらいいのか

2022年に、宅地化された大量の土地が市場に流れ出るということになります。
そうなると土地の供給過多が起こり、不動産価格の急激な下落が起こる可能性があります。
不動産投資家だけでなく、住居を購入しようとする方にも大きく影響するでしょう。
つまり、その時点で、ハウスメーカーなどに売るのか、アパートを建てるのか、それとも農地のままにするのかを決めないといけない、ということになります。
その農地の立地や面積、また所有者の状況を見ながら、総合的に最良の解を出していくという作業になるものと思われます。

生産緑地にある農地をこれからどうするのか、わからない場合は、弊社または当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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