なぜ相続登記をすることが必要なのか?


現在、高齢化が進んでいます。
その結果、現代は多死社会ともなっています。
そうなると、土地建物の所有名義を持つ人が多く亡くなる、ということになります。
しかし、特に土地評価額の低い地方では、土地建物の相続登記をせずに放置する、ということがままあります。
確かに、登記手続をすると、登録免許税という印紙代と、司法書士の手数料がかかってきます。
それに戸籍謄本も古いものまで探って多数取得しないといけません。
それで、財産的な価値の低い田舎の土地建物のために、そこまで費用をかけてられないという、実際的な理由があります。
また都市部でも、それこそ築年数の古い空き家や借地の空き家などで、相続登記をしない結果、誰のものかわからない建物が存在するという事実もあります。
空き家問題を解決しようにも、所有者が分からなければ、行政代執行で家を壊して土地を競売にして解体費を回収するという方法を取るしかありませんが、土地評価の低い地方や再建築不可の土地などでは売却代金による回収も難しくなります。
また、相続登記を放置することによる罰則も存在しません。
(実際には、10万円以下の罰金という法律はありますが、適用されたケースはないようです。)

では、なぜ相続登記をすることが必要なのでしょうか?
これはもちろん誰が所有者なのかをはっきりと公示するためです。
よく、不動産登記に公信力はないが、公示力があるといいます。
つまり、登記は真実の権利関係をそのまま表示しているわけではないが、登記をしておかないと、他の人に対して不動産の権利を主張できないということです。
そして、登記をするということは、公示をすることになりますので、土地建物が売却しやすくなる、ということになります。
さて、相続登記をしないとどうなるでしょうか?
例えば土地所有者Aさんが亡くなり、相続人がBとCの共有となったとします。
次に相続人Bが亡くなり、その相続人がDとEの共有になる、またCが亡くなり、相続人がFとGになる、などということが、どんどんと連綿と続くことになります。
そうなると、際限なく共有者が拡大することになります
つまり、相続が2回以上重なると、誰が相続人なのか、そして共有持分はどれだけになるのか、調査に相当時間がかかってしまうということになります。
その時点で、処分が必要だから相続登記をしようとすると、これまた手続費用と手数料が高額にかさむ、ということになります。
そうなると、その不動産を売りたいという時にすぐに売れないなど、思わぬ不利益が拡大するということになります。
そのため、相続登記は早めに手を打つことが必要、と言えます。

現在、そういう経緯をたどって相続人が分からなくなった、もしくは相続人不在となった所有者不明土地の面積が、九州の面積より広い、ということです。
そのため法務省は、相続登記されずに所有者不明となっている土地の本格調査を行う、という報道があります。
所有者不明土地を放置すると、災害復興など公共事業の妨げとなってしまいます。
災害から立ち直ろうとする被災者にとっても、困った事態となってしまいます。
そのため、現在は相続登記を放置することによる罰則は実質上ないものの、後々困るため、所有者と周りの皆様のため、相続登記は大切だといえます。

相続登記を行う先は、その土地建物を管轄する法務局です。
またこの相続登記を代理できる職種は、司法書士または弁護士となります。
懇意にしている先生がいない場合は、司法書士会や、当サイト、当職に聞いてみることもできます。

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