空き家を解体した後の建物滅失登記について

先日、台風21号が猛威を振るい、神戸市に上陸し、関西各地を吹き抜け、たくさんの風水害が発生しました。
また、北海道では大規模な地震が発生しました。
被害を受けられた方には、お見舞い申し上げます。
さて、老朽化した空き家には、かなりの台風や地震の被害が出ておられるかもしれません。
老朽化しすぎて活用のできない家は、解体やむなし、ということになります。
その空き家を解体したら、ほっと一息、というところです。
ところが、その後にする必要のある手続きがあります。
それが、建物滅失登記です。
なお、建物滅失登記は、土地家屋調査士の他、本人申請もすることができます。

建物滅失登記とは

まず登記とは、財産の所有者(自然人・法人)と財産(動産・不動産・債権・債務)に関する権利・義務の記録を行政機関である法務局で一括管理し、法律の効力で、それらを記録して、社会の円滑な取引を実現しようとする制度です。
なお、近い将来、登記はブロックチェーン(ビットコインの元となる技術)で行えるようになるようですが、現在は法務局での登記という制度となっています。
そして、建物滅失登記に関係するのも、もちろん不動産登記となります。
不動産登記は、不動産(土地建物)の所在・面積・所有者の住所・氏名・抵当権などを登記簿に記載して国民に公開するということです。
これによって、権利関係などの状況を明確にして、国民のだれもが不動産取引の安全と円滑化に資することができます。
ただし、不動産登記の効力は、公示力であり、公信力ではありません。
つまり、登記の記載事項を信じて取引して、問題が生じたとしても、登記を信じたことによる救済がないということになります。
こういった登記ですが、表示登記、保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記など、いろいろな種類があります。
そのうち、建物滅失登記は、建物の解体撤去を行い、対象となる建物が消滅したことを証明する書類を添付して登記申請を行って、建物の登記簿を閉鎖する手続きのことです。
また、この建物滅失登記は、解体工事後1ヶ月以内の申請が義務付けられています。
こうやって、登記簿に、対象とする建物がなくなったことを登記して、公示するわけです。

建物滅失登記と固定資産税の関係

建物を解体して、建物滅失登記をしますと、それを受けて、法務局は所在地の区市町村の固定資産税の担当部署に、対象建物が滅失したことを通知します。
これによって、区市町村は現地調査をして、固定資産課税台帳から、対象となる建物を取り消しします。
これら一連の流れ(建物滅失登記申請→建物滅失登記→区市町村への通知→現地調査→固定資産台帳からの削除)という手続きを経て、建物に対する固定資産税がなくなるということになります。
つまり、区市町村は、建物の有無に対して、建物からの所有者の行動により、有無を判断するということです。
それで、所有者からの建物滅失登記の申請がなければ、区市町村は課税の対象となる空き家の解体撤去を把握できませんので、固定資産税を課税し続けます。
なお、1月1日現在に所在している建物についての課税ですので、そのすぐ後に解体しても、固定資産税はかかりますし、また12月年内に解体登記を行えば、翌年の固定資産税は課税されない、ということです。
また、古い建物で、表示や保存登記申請を行っていない建物がありますが、そういう未登記建物でも、解体撤去をした場合は、家屋滅失届を区市町村に届けることによって、固定資産税の課税対象から外してもらうことができます。
なお、空き家の建っている土地は、軽減措置で、土地の固定資産税が6分の1になっていますので、滅失登記を出さずに、登記をそのままにしておくというケースも多いようです。
ただその場合でも、建物への税金はかかってくるということです。

なぜ建物滅失登記が必要なのか

不動産登記法により、建物滅失登記の申請は、義務となっています。
不動産登記法第57条では、「所有者または名義人は、滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない」となっています。
また、不動産登記法第164条では、「規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する」となっています。
つまり、建物滅失登記を怠ると、過料が発生することがあります。
実利としては、過料を免れるとともに、建物に対する固定資産税の課税を免れるためということで、建物滅失登記はするべき、といえます。

建物滅失登記はだれが行うのか

行政や司法に対する申請は、本人による申請が可能です。
しかし、申請書の作成や添付書類の作成等は、本人によるものが困難なことも多く、それで弁護士や司法書士、行政書士などが存在します。
この建物滅失登記ですが、申請者は本人で行うことができます。
相続が発生した場合は、発生後に相続人が被相続人・所有者に代わって行うことができます。
また、建物滅失登記の代理について、これは表示登記に関するものですので、土地家屋調査士となり、司法書士ではありませんので、注意が必要です。
次回に、具体的な建物滅失登記の書き方や申請手順について記します。

空き家を解体した後の手続きについて、どうしたらよいのかと悩む問題になりえることがあります。
そういった問題についてもお困りの場合は、弊社または当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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