分譲マンションの空き家の問題について
日本最初の鉄筋コンクリート造の都市型集合住宅は、大正末期から昭和初期にかけて建てられた同潤会アパートと言われています。
そして、日本最初の分譲マンションは、1956年建築の四谷コーポラスということです。
これらのマンションはいずれも東京都内です。
また、区分所有法が1962年に制定されています。
それ以来、分譲マンションが主に都市部に続々と建設されることになりました。
つまり、分譲マンションでももうすでに60年ほどの歴史があるわけです。
一方、分譲マンションの区分所有者もどんどん高齢化して、相続人がいないとか、またマンションそのものが老朽化して、建て替えが必要といった事態になっています。
そのため、分譲マンションの空き家問題が出てきます。
分譲マンションの空き家の問題点
東京、大阪など大都市の空き家問題は、すでにマンションが多くなってると言われています。
例えば、東京都の空家数は81万7000戸ですが、そのうち6割超の51万8600戸が鉄筋コンクリート造などの非木造住宅ということです。
このうち、分譲マンションの占める割合が急激に増えるとみられています。
国土交通省によると、全国の分譲マンションストックは、平成29年末において約644万戸で、現在も増え続けているとみられています。
そのうち、1981年6月より前に建築された、いわゆる旧耐震構造のマンションが、約104万戸あるといいますので、分譲マンション全体の約16%を占めています。
これらの古いマンションが、いったん空き家になると、耐震性や耐久性の問題で、売却も難しくなります。
分譲マンション全体の空き家率が現在2.5%程度ということですが、これが築30年以上になりますと、空き家率が10%を超えるとみられています。
こういった空き家率の高い、老朽化したマンションは、管理が行き届かなくなってスラム化に至る懸念があります。
また、こういう老朽化マンションは、区分所有者の相続が発生する時期となっています。
相続人である子供や孫が、その老朽マンションに居住する可能性は低いと思われます。
たとえばマンションの区分所有者が90代、その子供が60代などとなっていたら、子供世代はすでに別の所に家を所有しているケースが多いと思われます。
それに、相続したマンションをそのまま賃貸に出せたらいいのですが、築年数が古いと設備が老朽化しているため、大規模なリフォームが必要であったりします。
また膨大な家財道具があって、そのまま放置しているというケースも多いかと思います。
特に近年は、東京や大阪、神戸でタワーマンションが多数みられますが、こういう物件もやがて老朽化します。
それで、今後はマンションの空き家問題が顕在化するものと思われます。
老朽化マンションの建て替え問題
老朽化した分譲マンションを、古くなったからと言って建て替えるのは、同様に区分所有している他の所有者の同意が必要です。
区分所有法では、マンションの建て替え決議が成立するためには、単棟の場合「区分所有者および議決権の4/5以上」の賛成が必要とされています。
建て替え決議がなされた場合には、建て替えに反対する所有者に対しては、区分所有権の売渡請求をするということになります。
その区分が空き家になっていれば、区分所有者をを探し出す必要があり、区分所有者が亡くなっていれば、相続人が対象となり、さらに複雑になります。
老朽化マンションは、所有者が高齢となっていたり、所有者が亡くなって相続したが、売却も賃貸もできない状態として長く放置されている可能性もあります。
そんなマンションを建て替えるといっても、新たに費用負担が発生するなどとなれば、建て替え決議が成立する可能性も低くなります。
そもそも、各区分所有者それぞれ、年齢層や家族構成や経済状況など、ばらばらになっていきます。
それで、建て替えとして意見を1つにまとめるのは、ますます困難になります。
一方、容積率に余裕がある場合は、マンションを建て替えて床面積を増加させて、増加分を売却することにより、各戸の費用負担を抑えて建て替えることができるのですが、こういうケースはまれのようです。
逆に、容積率が建築当時より小さくなってしまうという既存不適格物件も多く、この場合は建て替えるメリットよりデメリットの方が多くなってしまいます。
そうなると、マンションの建て替えもできずに、建物がどんどん老朽化していって、スラム化が進んでしまいます
またスラム化が進むと、老朽化により建て替えをする必要性が発生しますが、高齢者の区分所有者は、「建て替えしないでくれ、ここは私たちの終の棲家だ」などと言い出すため、合意形成が困難になってしまいます。
管理費、修繕積立金の未納の問題
管理費や修繕積立金は、マンションを管理したり、修繕を行うために徴収が必要です。
しかし近年、区分所有者の高齢化や死亡後の相続人の放置により、管理費や修繕積立金の滞納が出てきています。
管理費未納や積立金不足があると、資金が足りないわけですので、管理や大規模修繕工事に支障が出てきます。
そうなると、建物の老朽化が進み、次第に住民が転居していくということになります。
つまり、スラム化していくということです。
さらに、近年、東京や大阪都心や神戸都心に建設されているようなタワーマンションですと、建て替える時に、容積率もぎりぎりで、構造も複雑特殊ということで大規模修繕の費用もかさむため、今後大変な問題になると予想されます。
ここまで問題点を書き連ねてきましたが、一戸建てとは違う空き家問題が生じることが分かります。
それでは、マンションの空き家対策は、どうしたらよいのでしょうか?
マンションの空き家に関する諸問題についても、お困りの場合は、弊社または当職においても相談を受け付けております。
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