市民農園の開設方法について

遊休農地を活用する方法として、農地として貸す方法や売る方法、また転用して、違う用途で使う方法があります。
しかし、いずれも農地法により制限されており、農地転用許可もなかなか下りないものとなっています。
それで、都市部の市民に農地を利用してもらい、対価を受け取ることができる方法として、市民農園が注目されています。
それでは以下に、市民農園にはどういった種類のものがあるのかを説明していきます。

市民農園の3つの開設方法について

市民農園の開設方法は、関係法令によって3つ存在します。
1.特定農地貸付法による方法
2.農園利用方式による方法(法律の規制はない)
3.市民農園整備促進法による方法
まず、1.については、市民に農地を貸し付ける市民農園で、賃料を受け取ることができます。
2.については、市民に農作業体験をしてもらう市民農園で、入園料を受け取ることができます。
3.について、休憩所、トイレ、駐車場、農機具倉庫など付帯施設がある市民農園になります。
市民に農地を貸し付ける方法と、農作業体験をしてもらう方法のどちらも可能です。
これらはいずれも、農地を市民に貸し付けるか、農作業体験をしてもらうかで分類されます。
さらに、付帯設備があるかどうかによっても異なってきます。
以下さらに詳細に見ていきます。

特定農地貸付法による方法について

これは、農地を小さく区画して、市民に貸し付けることで賃料を受け取る方法です。
この市民農園の開設には、農業委員会の承認が必要になります。
その貸し付け条件としては、下記の通りです。
1.広さは10a未満で相当数が定型的な条件で行うこと。
2.営利を目的とした栽培ではないこと
3.貸付期間が5年以内であること
まず1.についてですが、相当数とは一般に考えられる複数人への貸付けをすることをいいます。
また、定型的なとは、貸付規程に基づいて貸すということです。
この貸付規程とは、市民農園の利用者(農地の借受者)に対して、貸付期間や賃料などを定めたり、募集の方法などを定めたりすることを指します。
また、市民に農地を貸し付けるわけですから、市民が農地を使い収穫物を得る権利(使用収益権)が発生します。
ところが農地に権利設定をするためには、原則として農業委員会の許可を必要とします。
そこで、農業委員会から市民農園の開設の承認を受けることで、使用収益権の設定についても特例が適用され、別途許可が不必要になります。
この農業委員会への承認申請の際に、市町村と結ぶ協定である貸付協定と、前述の貸付規程が、必須の条件とされています。
2.の非営利の栽培ですが、最初から販売目的で借り受ける利用方法は営利目的とされます。
ただし、自家消費ができないほどの収穫があった場合に、近所に配ったり直売所で販売をしたりすることは可能となります。
また3.の貸付期間が5年以内ということですが、短すぎると栽培する作物が限定されてしまいますし、期間が長すぎると広く一般に利用させる趣旨にそぐわないということになるため、5年となっています。

農園利用方式による方法について

この農園利用方式による方法とは、農地の所有者が農業経営を行い、農作業に市民が参加することで、入園料を受け取る方法です。
農地を貸し付ける方法ではないので、利用者に対する使用収益権の設定もなく、農地法の規制を受けることもありません。
この農園利用方式は、下記の要件があります。
1.相当数が定型的な条件で行うこと
2.営利を目的とした栽培ではないこと
3.農作業が継続して行われること
この定形的な条件とは、農園利用契約により、適切な運営のために利用期間や利用料金を定めることです。
また、農作業が継続して行われるとは、例えば、収穫だけをさせる観光農園のような形態ではなく、段階的な複数の農作業を市民が体験するような形態のことを指します。
開設できる場所ですが、制限はありません。
ただ、モラルの低い利用者が周辺に迷惑をかけないよう、適切な運営管理が必要とされます。
また、開設者は農機具・苗・堆肥を用意し、市民に農作業体験をさせるということになります。
またできた野菜や果実は、農園利用方式では開設者の収穫物として扱われます。
これも契約により、利用者の収穫物として定めることは可能です。
そして、開設者は純粋に農作業体験をするという内容の利用料を、利用者から受け取ることになります。

市民農園整備促進法による方法について

これは、特定農地貸付法による方法、または農園利用方式による方法に、付帯施設を設置して、利用しやすい環境を整える方法をいいます。
農地の貸付けを行えば「賃料」を、貸付けを行わず農作業体験なら「入園料」を受け取ることになります。
これは、比較的規模が大きい市民農園で利用されます。
付帯施設の分だけ投資は増えても、環境のよさから賃料・入園料を高くすることができます。
開設できる場所ですが、市街化区域は特に指定がありません。
しかし市街化調整区域では、市町村が「市民農園区域」として指定した区域に限定されます。
したがって、市民農園整備促進法による方法で市民農園を開設するには、市民農園区域として指定されているか、指定してもらうことが前提条件となります。
この市民農園整備促進法による方法では、市町村に開設を認定してもらうという手続きが必要となります。
そして、その市町村の認定が、農業委員会の承認を得たのと同じ効果になります。
さらに、付帯施設の設置に伴う農地の転用手続きが不要となりますし、建築等の開発が制限されている市街化調整区域でも、休憩施設やトイレ、管理事務所などを完備するための開発許可を受けることが可能となります。

市民農園の開設について、どうしたらよいのかわからない場合は、弊社または当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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