耕作放棄地の現状について

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耕作放棄地の定義について

耕作放棄地とは、耕作に使われるはずの農地が、耕作されていない状態の土地のことを指します。
定義としては、過去1年以上の間、作物の栽培がおこなわれておらず、今後も耕作に使われない土地の状態を意味します。
耕作放棄が長期間になると、それだけ復元は困難になります。
この耕作放棄地を分類すると、次の通りとなります。
1.雑草を刈り耕せば、耕作が可能になる農地
2.直ちに耕作はできないが、整備を進めたら耕作可能な農地
3.長期間の放棄で農地への復元が困難な農地
直ちに耕作できる農地で、耕作の意思もある農家が何らかの理由で耕作していない土地は、休耕地となります。
なお、似たような言葉に「遊休農地」があり、こちらは耕作はされていても、利用の程度が著しく周辺より劣る農地が含まれます。
例えば、自分で食べるだけのわずかな作物を栽培しているケースなど、事実上は大半を放棄している農地であるものの、土地単位で見れば一応の耕作がなされていますので、遊休農地という扱いとなります。
実際はそこまで厳密に考える必要もなく、所有者の意思で耕作を放棄していれば、耕作放棄地ということになります。

耕作放棄地の問題点について

耕作放棄地には様々な問題が生じてきます。
以下に少しずつ列挙していきたいと思います。

雑草や害虫の問題

農地も個人所有の土地なので、所有者の意思で放棄するのも自由であるはずです。
しかし、耕作放棄で問題になるのは、放棄された土地よりむしろ周辺の土地に影響が及ぶということです。
つまり、雑草や害虫が増加してしまう、ということです。
雑草や害虫の増加を抑えるには、農薬が必要になりますが、作物を栽培しない土地に農薬をわざわざ使うということは考えられません。
そうなると、耕作放棄地では雑草や害虫が増えて、周辺の農地に悪影響が出ます。
周辺に迷惑がかかるのですが、その耕作放棄地も地権者が所有権を持っているので、どうにも折り合いが付かないようです。

中山間部の鳥獣の問題

さらにその耕作放棄地が中山間部になりますと、山間部に生息する鳥獣による被害が出てきます。
中山間部の農地は、人間の活動範囲として、動物の侵入に一定の役割を果たしており、その耕地の作物被害はあったとしても、集落への被害は食い止められてきた面もあります。
つまり集落の周辺に農地があり、さらに外側に山地があるという構造なので、人間と野生動物のテリトリーにおける緩衝地帯として、役に立っているというわけです。
ところが、耕作放棄地が増加すると、野生動物が活動範囲を広げるので、緩衝地帯がなくなった集落にえさを求めて現れてきます。
サルやイノシシやクマが、集落に現れて、それがニュースになる、ということも増えてきたように思います。

食料自給率の問題

もちろん、日本の食料自給率にも影響してきます。
万が一の事態で食糧輸入ができなくなった場合、自給率が低いと食糧危機に陥る可能性も出てきます。

ゴミの不法投棄

さらに、ゴミの不法投棄という問題が出てきます。
元から不法投棄する人というのはいるものですが、耕作放棄地が原野と化し、人の気配がないとなれば、なお一層不法投棄されやすくなります。

農地の集積化の障害

また、農地の集積化が遅れるという問題もあります。
農地の集積化とは、政府の方針であり、複数の農地を集めて一段の優良農地を形成し、大規模農業経営者に効率よく耕作させようとする働きかけです。
耕作放棄地は、耕作可能な農地とするためには大きな労力と費用を必要とするため、農地の集積化にとってはマイナスとなってしまいます。

農地の持つ多面的な機能の喪失

田畑には水が不可欠です。
その取水源は圧倒的に河川となります。
それだけでも河川の水位を下げる効果がありますが、雨量が多くなった時は、洪水を防止する機能が発揮されます。
田は畔があり、浅い貯水池のような形状が続きます。
それで、言って医療の雨を物理的に蓄えることができます。
また保水力があるので、雨水が地下に入って河川への流出を防ぎます。
つまり、大量降雨があって、洪水になりそうであっても、こういった保水機能があるため、田畑で蓄えてから河川へ流出し、結果として洪水が起きないか遅れます。
つまり、治水に役立つ、というわけです。
ところが、耕作放棄地になった場合は、保水能力が耕作地より低くなり、雨水が河川に流出しやすくなるので、洪水を引き起こす場合があります。
2015年9月の茨城県常総市の大雨と河川決壊の大水害は、ニュースを見て、衝撃で、記憶に新しいことかと思います。
あの洪水でも、田畑の広がる地域を流れていなかったら、もっと早くに堤防決壊していた可能性があるというわけです。

耕作を放棄し続けるとどうなるか

耕作放棄地は、土地としての実質的な価値も大きく損なわれていきます。
原野化した耕作放棄地は、農地への復元は難しく、宅地に転用しても造成費がかかります。
土地の価値は、使える状態にするための費用は控除して考えるのが普通で、耕作放棄地を引き取って耕作できる状態へ改良するのはなかなか困難です。
宅地でも、整地された元農地と、大規模な増勢が必要な耕作放棄地を比べた場合、取引価格も雲泥の差となります。

なお、耕作放棄地が生まれる原因と再生利用については、次回に記します。

耕作放棄地をどうするかについても、わからない場合は、弊社または当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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